VIPユーザー担当

おおよそ、昭和生まれの社長や役員の方々は、IT技術を活用した実務の経験はあまり多くないと思われます。その理由として、 今の 20代から40代の人のようにデジタル機器を使いこなさず、仕事を行ってきたため、そもそも使用した経験が少ない人たちだからです。

しかし、経営陣ですから、新聞や経営、雑誌等には精通しており、最新の技術や他の会社の動向については敏感です。 例えば「当社のオムニチャンネルは、いったいどうなっているのか」とか「DXを進めないといかんな」と言ってきます。 実際には、自分の会社にはさほど必要がなくても、他の会社がやっている様子をマスコミで報道されると、ついつい焦ってしまい情報システム部門に話が舞い込んで来ます。

こうした方々の発言力や影響力は非常に大きいものですから、無視するわけにはいきません。新しい技術に関しては、定期的に会議で紹介をしていくといった対策をする必要があります。ですが、それにも増して面倒なことがあります。

それは、パソコンの設定やトラブル、バージョンアップ、通信障害といったことが社長や役員の方々で 発生すると一般のスタッフとは違って大変な騒ぎになってしまいます。 だいたいの場合、大きな声で「いったいどうなってるんだ」とか「当社のシステムは本当に遅れている」といったことを情報システム部門に言ってくるのです。


彼らを特別扱いをするために私は「VIPユーザー」と呼んで、 情報システム部門の中で特定の対応者を決めて担当させることにしていました。その担当者は、愛想が良く、動きが早く、 腰が低く、社長や役員の方々でも気軽に声をかけることができるような人が適任です。

例えば、システムのバージョンアップがある場合、今では、マニュアルをユーザにメールで一斉に配信をして、「自分でセットアップしてください」というやり方があると思います。しかし、こうした「VIPユーザー」たちはそうはいきません。 ユーザにマニュアルを一斉配信をする前に、個別に彼らを訪問して担当者が自身でセットアップをしてあげることです。

そうやって「あなただけ特別です」という特別感を味わせてあげてください。この「特別感」というものは、 高級ホテルや、高級ブランドで行われているVIPの顧客に対する特別なサービスと同じで、彼らのロイヤリティーが高まるものです。

つまり、情報システム部門が、発言権のあるVIPユーザーの信頼感を得ることができるのです。こうした信頼は、プロジェクトの企画審議や、新システム導入の時に好意的に話を聞いてくれることにも役立ちます。もちろん、VIPユーザーの方々は、大変忙しく重要な責務がありますから、彼らのシステム対応への時間を減らしてあげるということも意図しています。

最近は、リモート会議も多くなり、 VIPユーザでも自分のオフィスで仕事をする事が増えました。そして、よくある問題が通信障害です。つまり、パソコンの反応が遅いとか、声が聞こえないとか、画像がちらつく、といったことが大きな声で上がってくることがあります。

そもそも、Wi-Fiには、2.4GHzと5GHzがあり、2.4GHzであると障害物があっても比較的遠くまで電波が届きやすいというメリットがありますが、一方で、電子レンジなどの電波の干渉を受けやすく、速度が急に落ちてしまやすいという特徴があります。また、5GHzは2.4GHz よりも速度は速くなりますが、その分、壁などの障害物の干渉を受けやすいのが特徴です。

これらの特徴を考慮した上で、オフィス内の的確な場所にアンテナを設置していると思います。 しかし、私がお勧めするアンテナの設置方針は、オフィスの中央よりも隅の方にすることで、通信が快適でストレスなくできるようにします。オフィスの中央にアンテナを置いてしまうと、オフィスの隅までに障害物があったりした場合、電波が届かないことがよくあるからです。

オフィスの隅がなぜ重要かというと、だいたいのお偉いさんたちは、フロアの隅や奥に自分のオフィスや座席があります。 そうすると、オフィスの中央にいる一般スタッフたちに電波が届かないのではないか、といった心配もありますが、彼らは比較的おとなしく、特別扱いのVIPユーザーほどクレームは激しくありません。

また、最近では、メッシュ型Wi-Fiもあるので、そうしたアクセスポイントの多いWi-Fiシステムを入れるのも方法です。とにかく、Wi-Fi速度は、まずは、オフィスの隅、つまり、VIPユーザーがいる役員室や社長室にきちんと届くかどうかということが、大きなポイントになります。

特別扱いのVIPユーザを担当するスタッフが、愛敬の良い女性だったり、感じの良いスタッフであったりすると、その人の実績や実力の評価にかかわらず、なぜか、その人がまず昇進してしまうということが起きてしまいます。社長や役員たちのウケが非常に良く、近くで見ているマネージャーが考えている以上に、その人の評価が高くなってしまうからです。


そうしたときに、 情報システム部門の責任者は他のスタッフに対して、きちんと説明してあげることです。「特別扱いのVIPユーザに担当するあの人がいるおかげで、声が大きいユーザーをきっちりとケアしているから、僕たちも安心して仕事ができるんだよ」と。本当に屁理屈ですが、そう言ってあげれば、少しばかりは慰めになるのです。

 

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