システムの導入には、プロジェクト導入企画書が必要です。 導入するシステムによっては、特定の部門だけの効率が良くなったり、特定のグループの人たちだけに影響する場合があります。プレゼンテーションを行う上で、認識しておかなければいけないのは、利益を得る人たちは誰か、ということです。プロジェクトマネージャーは、まずは、その人たちを味方につける必要があります。
例えば、マーケティング部門に新しいツールを入れるのであれば、彼らは直接的に利益を得ることになります。また、顧客の購買傾向分析の定期的なレポートが可能になることによって、間接的な効果として、営業部門が顧客に対してアプローチがしやすくなる、といった他部門の利益もプレゼンテーションの中にちりばめておきます。そうすることで、マーケティング部門のみならず、営業部門も、このプロジェクトを後押しをしてくれます。
一方、特定のグループが反対する理由も事前に想定しておきましょう。反対の理由というものは、表面上はもっともらしいものであっても、その動機は、だいたいが自分の部門の利益が損われることへの恐れであったり、他部門への嫉妬心であったりします。
導入企画書を作成する場合は、どの人の「個人の利益」が満たされるのか、どの人が「不利益を被る」のか、あるいは、「誰が・誰に対して・嫉妬心を抱いてしまう」のか、ということを事前に想定をしておきます。「個人の利益」とは、普遍的なものです。どこの組織でもおおよそ変わらないのです。
また、「不利益を被る」、あるいは、「嫉妬心を抱いてしまう」と言うグループに対しては、役員会などの正式なプレゼンテーションの前に、プロジェクトの背景や事情について個別に説明をしてあげます。
「来期の予算で、皆さんが欲しがっているシステムは計画しますから、今回は・・」、「社長がどうしても他の意見を聞かないので、これを進めることになったんです。他に優先するものはあるのですが、どうぞご理解ください」といったメッセージを特別に送ってあげます。
組織での「個人の利益」とは以下のようなものがあると思います。これらの「個人の利益」に対して上手に訴えることで、物事をサクサク進めることができるのです。
■そのプロジェクトをやらなくても良いと本当は思っているが、社長がやりたがっているので賛成をしておこう。
■自分の部門の作業が増えそうなので、本当はめんどくさいと思っている。ただ会社の方針なので仕方がない。
■自分の部下に新たな業務で重荷を課したくない。部下によく思われたい。
■すごく好きな分野で興味があるので、どうしてもそれをやってみたい。ただ他に大きなタスクがあっても。
■あまり興味がないシステム導入だが、ここは賛成をして恩を売っておこう。
こうした利害関係をよく分析した上で、プレゼンテーションに望む事は、成功のカギとなります。また、事前に利害関係者に、粘り強く個別に話をして、納得をしてもらうと言うことも大切な仕事なのです。