何とか乗り切るICTプロジェクトマネージャー(第3回)

ここからは、プロジェクト企画書作成に入る前に、まずはICTに関するマネジメント体制を整えることを提案しています。そうすることで一部の経営陣がすでに把握している問題や課題について、情報システム部門として深掘りをし、それらを経営陣や関係する組織へ報告できる体制にします。

すなわち、定例の情報システム委員会などで報告をしたり、プロジェクト進捗レポート、課題管理レポートといった情報を報告することです。こうすることで、プロジェクト化の承認を得やすくなりますし、すでに問題点や課題が組織で共有されていることによってスムーズに素早くプロジェクトがスタートすることができるのです。

 

■マネジメント体制を整える

これまで、情報システムに関する問題点や課題の認識がされていることが重要だと述べきました。これを実現するためには、短期的な取り組みではなく、中長期的にマネジメント体制を整えることです。

まずは、情報システム部内で、①ヘルプデスクからの情報、②トラブル 発生の原因と対策案、③新しい技術の情報、④ユーザからのシステム改善リクエスト、⑤予算の進捗具合、⑥現在取り組んでいるプロジェクトの状況、⑦セキュリティに関する問題や⑧ITアセットとバージョンといったことが常時、情報システム部内で共有されていなければいけません。

そして、これらの中から上位会議エスカレーションするものを情報システム部の責任者が議題として選び「情報システム委員会」などの社内会議で定期的に報告します。すでに、定期的にこうした情報が上位会議で共有されていれば、その後のプロジェクト企画の提案もその会議を通してやりやすくなります。

まずは、情報システム部内で発信すべきレポート類を整理することです。そうでないと、継続的に「情報システム委員会」といった会議は運営できないからです。また、ユーザー側からしても、こうした「場」があると、現場の問題を報告しやすくなります。こうした「場」は、その後のシステム導入など全社に関わるプロジェクトの運営を非常に助ける存在になるのです。

これらは、情報システム専門の会議ではなくとも、月例の経営会議や執行役員会議などでも良いと思います。まずは、こうした情報が共有されるような仕組みにしておくことで、ユーザからのリクエストの状況やトラブルなどの問題を経営陣と共有することが出来て、新しいプロジェクトの提案や投資案件も承認が早く得られるようになります。

もし、こうしたコミュニケーションの場がないと、ゼロから全てを説明しなければいけないので相当な労力と時間がかかります。情報システムは目に見えないものです。普段意識しないと、そこにどれだけの労力やお金が使われているかと言う事はなかなか認識されません。 まずは、報告体制を整え、その積み重ねをしておくことです。

また、 全社的なプロジェクトが開始されると、こうした情報システム委員会などが、プロジェクトのステアリングコミティーの母体となりスムーズに運営することができるのです。

 

■既存の問題の深掘り

定期的に経営会議やシステム関連の会議で、社内にあるシステム上の問題点や課題について話がされているのであれば、そこに出ているいくつかの問題点について、まずは深掘りをしていき優先度を評価することです。

なぜならば、これらはすでに経営陣で認識されており、問題点の事実確認とその対策案の提案で話がとても早く進むことができるからです。

具体的な深掘りをする方法としては、特定の業務のフローの棚卸をします。すなわち、それぞれの担当から業務のスタート、準備からフォローアップまでを丁寧にヒアリングをし、どこに問題があるかを特定します。ここでいう問題は、「時間がかかる」になります。

しかし、ヒアリングでは、出てくる問題点は「使いにくい」「わかりにくい」といった抽象的な言葉で出てきます。これらをまずは具体化することです。「使いにくい」は、例えば、作業のステップが多く「時間がかかる」という状況を指しているかもしれません。

ですので、それらの作業一つ一つをピックアップしていき、どの作業とどの作業をなくすことができるのか、あるいは結合することができるのかと言う視点でヒアリングをしていきます。 また「わかりにくい」と言うのは、必要な情報と不必要な情報が混在しており、それらを分類・整理するして、必要な情報を抜き出すのに「時間がかかる」ということです。

いずれにしても、問題点は「時間がかかる」に帰結します。「エラーが多い」という場合は、そのエラーの修復をするのに時間がかかる、とか、「レポート作成するのが面倒だ」は、複数のシステムから様々な数値を 引き出してこなければならず、それらを一つ一つ引き出して転記するのに時間がかかる、といったものです。

そして、それぞれの業務ステップの概算時間もヒアリングしていきます。ユーザーは、実工数を常にイメージして回答しますので、前後の準備や段取り時間、問い合わせなどのフォローアップの時間もここには入れるようにします。

時間は、段取り時間、実工数、フォローアップ工数と分かれますので、それぞれについて、「例えば」、「それから」、「他に」を繰り返しながらユーザーに質問を重ねて作業を思い起こしてもらうことです。

こうして、目の前にあるいくつかの大きな問題点や課題について、一つ一つ丁寧にヒアリングをしていき、どこに時間がかかっているかを特定して問題点の優先順位をつけていくことです。まずは、すでにテーブルに出ている問題、課題に取り組むことです。

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