何とか乗り切りるICTプロジェクトマネージャー(第10回)

◾️プロジェクトで大切なことは「どうしたらできるか」と「言葉の解釈」

朝のテレビを見ていたら、巨大ガンダムロボットを作るプロジェクトでリーダーを務めていた方の話が出ていました。彼はプロジェクトリーダーとして、テレビのアニメで出てきたような大きなガンダムロボットを作るというプロジェクトを率いていたそうです。

そのプロジェクトの時に苦労した話がテレビのインタビュー形式で流れていました。その話は、私がこれまでプロジェクトを運営していて、常々感じていることと合致していたので非常に共感したことを覚えています。

◾️日本語のデジタル化を

彼はプロジェクトを進める上で、最も大変だった事は、いろいろな会社の方々がプロジェクトに参加していて、その方々が日常使用している言葉の解釈が人によって違っていることで、思うようにコミュニケーションができなかったことだそうです。こういう意見だろうと思ったのが、実は全然違っていたり、話していても意図がなかなか通じないということでした。そうなんです。日本語は、言葉の定義はあるのですが、その解釈は人によって大きく違ってくるという特徴があります。

特に会社や集団が違っているどうしのコミュニケーションでは、それぞれの集団で使われている言葉が、他の集団とは違う意味にとられることもあります。プロジェクトでは、こういったことがよく起こるのです。しかも、複数の会社で合同で行うプロジェクトならば、その会社で普段何気なく使用している言葉が、他の会社では同じ言葉でも解釈が違うこともあるのです。

ですから、私が普段、レポートやプレゼンテーションなどの指導で注意することは、まずは、漢字熟語には、解釈が人によって異なる可能性がありますので、その意味を補足する説明をつけることです。そのためには、ひらがなを意図的に多く使い丁寧に説明し、くどいくらいでちょうどいいくらいになるのです。

また、略語は極力使わず、読み手に負担をかけないわかりやすい言葉でコミュニケーションします。これらによって、日本語が細かく砕かれるのです。大きな塊では、一口では食べられません。細かく砕いて少しずつ食べられるようにしてしっかり消化してもらうのです。これを私は「日本語のデジタル化」と呼んでいます。

◾️できない理由からだと先に進まない

もう一つは、プロジェクトが困難に直面した時に、「ああ、それは無理、無理」、「それはできないよ」と、できない話をしてしまわないことです。できない理由から延々と始めてしまうと、もう、「どうしたらできるか」という議論には戻れません。

まずは、「どうしたらできるか」から始めて、その後に、できない時の「リスク」について話すことです。このガンダムプロジェクトリーダーは、「言葉の解釈」と「どうしたらできるか」という二つのことが最も苦労したことだと言います。

私も、プロジェクト運営では、この二つが最も大切なことだと思っています。そう考えると、きちんとお互いが意思疎通できて、前向きに「どうしたらできる」と考え続ければ、プロジェクトはたいがい必ず成功するということです。

◾️成功のためには

プロジェクトを成功に導くためには、プロジェクトチームメンバーを支える信頼関係が重要です。お互いに尊敬しあい、支え合い、信頼し合っているかどうかです。日本のプロジェクトは欧米とは異なり、「同じ時間」「同じ場所」を長く共有することで、コンテクストを多く含む日本語のコミュニケーションを積み重ねることで、お互いの信頼関係が増していきます。

そのためには、まずは、単にプロジェクト担当メンバーとしてではなく、一人の人間としてお互いに向き合うことです。プロジェクトには、形も色もありません。あるのは人間関係だけです。食事会を積極的に企画したり、や仕事とは関係ない話を会議に合間にしたり、特にリーダーは雰囲気を明るく、風通しの良い環境にするために努力することです。そして、その人間関係が良好でお互いに信頼し合っていれば、プロジェクトは期限通りに、そして、必ず成功に終えるのです。